【経験者が解説】施工管理でブラック企業の特徴とは?辞めたい場合の手順も

建設現場で働く職人

自分の職場はブラックなんだろうか?
施工管理のブラックってどこから?

今回は、こんな疑問にお答えします。

この記事の内容

  • 施工管理の仕事内容や年収について
  • 施工管理がブラックと言われる理由
  • ブラックな施工管理会社の特徴
  • 施工管理の将来性

この記事を書く私は、16年間の施工管理経験があります。

その中で、実際に経験した人にしかわからない施工管理の現状やブラック企業の特徴について、わかりやすく解説します。

施工管理は専門性が高く、経験しないとつらさや大変さがわからない仕事ですよね。。

なので自分の職場と照らし合わせながら、記事を読んでみてください。

目次

施工管理の現状とは

建設工事現場の様子

まず施工管理の仕事を3つの項目で、簡単に説明します。

  • 施工管理の仕事内容
  • 1日のスケジュール
  • 年収の平均

施工管理は職種でいうと、建設業のうちの1つ。

施工管理の仕事内容

施工管理は4大管理の安全管理、品質管理、工程管理、原価管理の幅広い業務を行います。

4大管理とは

  • 安全管理:労働者の安全確保や労働災害が起きないよう必要な対策をする。
  • 品質管理:建設物の品質を確保し、法律違反にならないための確認をする。
  • 工程管理:工事の進捗状況を把握し、工期内に仕事が終わるようにスケジュール管理をする。
  • 原価管理:予算内で工事が終わるように、お金の計算をする。

以上が施工管理の主な仕事です。

そして、施工管理といっても詳細は下記の7種類の分野にわけられます。

  • 建築施工管理技士
  • 土木施工管理技士
  • 電気工事施工管理技士
  • 管工事施工管理技士
  • 造園施工管理技士
  • 建設機械施工管理技士
  • 電気通信工事施工管理技士

いずれの分野でも、仕事内容は上記の安全管理、品質管理、工程管理、原価管理。

分野はちがっても施工管理の仕事内容は同じです。

1日のスケジュール

スケジュール調整をする男性1人と女性2人

スケジュールについては、会社や各分野で異なりますが、大幅なズレはないでしょう。

1日の流れ

  • 8:00事務所についたら工事現場へ移動。
  • 9:00従業員が全員集まったら、現場打合せをして現場作業開始。現場作業中は監督業務。
  • 16:00現場作業が終わったら、事務所に戻る。
  • 17:00書類作成業務。

工事現場で作業して、事務所に戻って書類作成をするのが1日の流れです。

仕事内容や工事の規模によって、自宅から工事現場に直行直帰できる会社もあるでしょう。

また、書類作成業務や事務内の仕事量で残業時間は増減します。

年収の平均

施工管理の年収平均は、経験やスキル、資格の有無によって異なりますが、おおよそ500万円から700万円程度でしょう。

厚生労働省の労働統計によれば、建設業界の平均年収は約570万円程度です。

出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について

ただし、施工管理の役割は専門性が高く、経験やスキルに応じて年収が増加します。

新卒で施工管理の職に就いた場合は、年収は約400万円程度からスタートすることが一般的でしょう。

また、経験を積みスキルが向上することで、年収は600万円以上になることも珍しくありません。

さらに、プロジェクトマネージャーや技術責任者に昇格すると、年収は800万円以上になることも。

以上のことから、施工管理の年収は、全産業の平均年収と比較して高い傾向です。

施工管理がブラックと言われる理由

夜遅くまで残業をし疲れて寝てしまった人

施工管理がブラックと言われる理由を7つ紹介します。

  • 労働時間がながい
  • 休日が少ない
  • 労働環境がきつい
  • プレッシャーがかかる
  • 仕事内容に対して給料が低い
  • ストレスがたまりやすい
  • 屋外作業で体力をつかう

順番に解説します。

労働時間がながい

施工管理の労働時間は、他職種と比べてながいです。なぜなら、単純に仕事量が多いからですね。

出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」よりtugoが加工

厚生労働省の令和3年度調査によると、年間実労働時間は調査産業計で年間合計1632時間に対し、建設業では年間合計1978時間です。

調査産業計より、年間で346時間もながい労働時間。月に20日出勤した場合、おおよそ1日1.5時間多い計算です。

これは建設業全体の統計ですが、施工管理に限定した場合はもっとながいと思います。

というのも施工管理は、現場作業の他にも管理業務をしなければならないからです。

そして管理業務こそが、精神的にきつく、ブラックと言われる理由の1つ。

以上のことから、建設業は施工管理を含め、労働時間がながい業界です。

休日が少ない

年間出勤日数についても、調査産業計で年間合計212日に対し、建設業では年間合計242日です。

調査産業計より年間で30日も多く出勤しています。

出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」よりtugoが加工

また、建設業全体で週休2日の人は、全体の2割程度しかいません。

以上は、建設業全体のデータですが、施工管理はさらに休日が少ないといえます。

なぜなら、休日でも現場でトラブルがあれば、電話がきたり、急遽かけつけたりしなければならないから。

それに加えて、工期が迫っている工事などは、休みを返上して働くこともあります。

私も施工管理をしていたときは、休日に何度も電話がかかってきました。

プライベートのスマホより、会社で貸与されているスマホの音の方が鳴っていましたね。

以上のことから、施工管理の休日は少ないといえます。

労働環境がきつい

建設業界は、過酷な労働環境により従業員が死傷する事故も多いです。

なぜなら、屋外作業で重量物を持ち運びしたり重機や電動工具を扱ったりするからです。

下記は、令和3年1月1日から12月31日までに発生した労働災害について、令和4年4月7日までに報告があったものを集計したデータです。

出典:厚生労働省「令和 3年 労働災害発生状況

厚生労働省調査によると、建設業は死亡者数が288件。他職種と比べても1番多いです。

私自身も自分が指揮する工事現場で、作業員がケガをしたり熱中症になったりした経験があります。

また、他社の同業種による事故概況なども毎日のようにメールが届いてました。

データからもわかるように、建設業界は労働環境がきつく事故が起きやすい仕事といえます。

プレッシャーがかかる

施工管理業界では、安全管理、品質管理、工程管理、原価管理すべてにおいて、責任が重くのしかかります。

管理別の不安要素

  • 安全管理:作業員がケガをしたらどうしよう
  • 品質管理:施工不良があったら・・・
  • 工程管理:工期内に終わらなかったら・・・
  • 原価管理:赤字になったら・・・

これらの不安要素があるでしょう。

施工管理の仕事は、工事を無事故で終わらし、お客様に期日内に良いものを提供し、会社に利益をだすこと。

いずれか1つが欠けても責任を追及されるので、プレッシャーがかかることは間違いありません。

仕事内容に対して給料が低い

施工管理の給料は他の職種と比べると低い方ではありませんが、物足りないと感じている人もいるでしょう。

その理由は、仕事内容のつらさやサービス残業することもあるからです。

国税庁の令和3年分調査によると、業種別の平均給与で建設業は511万円です。

出典:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査

施工管理は、資格やスキルによって給料は変動しますが、建設業界全体ではそこまで給料は高くないですね。

以上のことから、仕事内容に見合った報酬が得られないと感じる人もいるでしょう。

ストレスがたまりやすい

stressと書かれたイラスト

施工管理は発注者と職人の間に立つ仕事であるため、両者との調整に気を使うことが多く、ストレスがたまりやすい職種です。

なぜなら、自分の言いたいことを我慢することが多いからです。

たとえば、発注者側からの要望で工期の短縮を求められたり、○日までにやってほしいとか無茶なお願いをされることもあります。

しかし、発注者とあってはなかなか意見が言いづらいのが本音。

そんなお願いをされれば、受注者のこちらが引くしかならず、無理をする場面が何回もありました。

なので立場上なかなか意見できないことが原因で、精神的なストレスがたまりやすいでしょう。

屋外作業で体力をつかう

汗をふく工事現場の男性

建設業界では、現場作業が主であり、屋外での作業が多いため、炎天下や寒冷な環境下で働くことが一般的。

職人よりも体を動かすことは少ないですが、ほとんど立ち仕事です。

服装もヘルメットや安全チョッキ、安全靴を着用するので蒸れます。また、事故防止のため真夏でも長袖で作業し、腕まくりは禁止。

以上のことから、施工管理は体力がない人にはきつい仕事です。

ブラックな施工管理会社の特徴

施工管理の仕事はきつい仕事ではありますが、やりがいのある仕事でもあります。

しかし、やりがいも起きなくなってしまうブラックな会社もあるでしょう。

そんなブラックな施工管理会社の特徴を下記の具体例3つで解説します。

  • 担当者任せ
  • 協力会社に管理能力がない
  • どんな仕事でも受注する

順番に解説します。

担当者任せ

夜遅くまでPC業務をする男性

1件の工事を請け負い、その工事に関することを担当者に任せっきりにしてしまう会社はブラックな働き方になってしまいます。

なぜなら、他の人が協力してくれれば負担が減ることを自分でやる必要があるからです。

たとえばですが、工事書類にしても担当者以外の人が作成できるものもあります。また、資材の納品の立会いなどは担当者以外でも対応可能。

このようなことが常態化しているのにもかかわらず、環境を変えようとしない会社や環境を変えることができない人手不足な会社はブラックといえます。

日頃の仕事量が多いのに雑務までやっている施工管理会社は注意しましょう。

協力会社に管理能力がない

施工管理は、いろいろな協力会社と一緒に仕事をします。

しかし協力会社によって、こちらの気配りする度合いがちがいます。

具体的に言うと、ある程度説明すれば仕事を任せられて安心できる協力会社。一方で、説明したのに忘れ物をしたり、作業人員が足りなかったりする協力会社。

後者のいい加減な会社と一緒に仕事をすると、余計な労力をつかうだけでなく、事故が起きる可能性もあがります。

なので、工事現場でも常に気を張って監視の目を向けなくてはなりません。

そんな会社と仕事しなければいいじゃんと思うかもしれませんが、そういう訳にもいかないのが現状です。

以上のことから、意識の低い協力会社をつかわなければならない会社は、施工管理者の負担が増えブラックな働き方につながります。

どんな仕事でも受注する

多くの仕事に頭を抱える男性

依頼された仕事をすべて請けおってしまう会社もブラックといえます。なぜなら、単純に業務量がふえるからですね。

忙しいときは、発注者側から何件もの工事案件の問い合わせがあります。

会社としては工事をもらえれば売上が上がるので受注したいでしょう。

しかし、1件工事を請け負うだけでも、相当な労力と時間をとられますよね。

現場実態を考慮してくれる管理者がいればいいのですが、根拠もなく工事を受注する管理者もいます。

そうなると1人で複数の工事現場を担当することになり、休日出勤や残業時間もながくなってしまうでしょう。

ですから、仕事を受注する管理者の影響もブラックな働き方になる理由の1つです。

施工管理のブラックは今後改善されるか

workとlifeを比べたイラスト

2024年4月からは、労働基準法改正により、建設業界でも労働時間の上限規制が設けられることになります。

具体的には

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えるのは年6回まで
  • 一時的に忙しい時期でも2~6か月の平均で80時間以内
  • 単月100時間未満

出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

働き方の制限がきびしくなる一方で、建設業の労働者人口は、55歳以上が約35.5%、29歳以下が約12%と高齢化が進行しています。

出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について

また、60歳以上が全体の1/4(25.7%)を占めており、10年後には大半が引退するのが現実。

こういったことから建設業界は、長時間労働を改善するための対策や若い人材を確保するための対策が求められます。

しかし、働き方改革を実現するのはまだまだ先のように思います。なぜなら、建設投資は増えているのに人手は足りないからです。

出典:国土交通省「令和4年度(2022年度) 建設投資見通し 概要

なので働き方改革を実現しようと具体的に対策している企業や、若い人材確保のために具体的に対策している企業は、徐々にブラックから改善されていきます。

しかし、働き方改革について何も対策をしていない企業は、今後働き方に制限がかかるため、更にブラックになることが予想されるでしょう。

ブラック企業からの脱出方法

ブラック企業はすぐにでも辞めた方がいいですが、環境を変えることでブラックが改善できるなら辞めないほうがいいです。

その理由は、会社を辞めるのにも手間と労力がかかるからです。なので会社を辞めるかの決断は、会社に交渉してから考えましょう。

会社に交渉する

ブラックで働いていた方はメチャクチャ仕事をしている方だと思うので、会社側に労働条件の交渉をしてみましょう。

というのも、会社側は施工管理で働く人に辞めてほしくありません。

なので交渉してみて少しでもいい条件で働けるのであれば、辞めない選択肢もありです。

交渉結果に納得できるかできないかで判断しましょう。

しかし交渉は、ある程度施工管理経験がながく会社に必要とされている人が望ましいですね。

退職・転職する

5人中1人に選ばれた男性

何をしてもブラックが改善されない、または改善する見込みがない会社は思い切って辞めた方がいいでしょう。

なぜなら、社員のことを大事にしていない会社だからです。

上記でも説明しましたが、建設業の労働者人口は60歳以上が全体の1/4(25.7%)を占めており、10年後には大半が引退します。

ですが、国の建設投資額は増え続けているので人手不足なのに仕事はたくさんあるのが現状です。

こういった人手不足な状況にもかかわらず、1人の仕事の負担を増やし、なんとか現状をしのいでる会社に将来性はありません。

ブラックな働き方で悩んでいる方は、今すぐ転職をおすすめします。

施工管理は需要がある仕事。転職するうえで非常に有利なので転職サイトには登録しておきましょう。

ブラック企業と向き合うための心構え

大量の書類

人それぞれ事情があるので、会社を辞めるのに抵抗がある人もいると思います。

そんなあなたに向けて、ブラック企業と向き合っていくための考え方をお伝えします。

自分の価値観を大切にする

自分の価値観を大切にしましょう。なぜなら仕事は、生きていくために必要な1つのツールでしかないからです。

ブラック企業で働けば人生の大半を仕事に費やすことになります。やりたいことが仕事であればそれでもいいかもしれません。

しかし、自分の時間がなく趣味にも没頭できない、せっかくの休日でも仕事が頭から離れないなんて人もいるでしょう。

そんな方は、今後の人生において、仕事の優先順位を見つめなおすことも必要。なんのために働いているかを冷静に考えることも大切なことです。

助けを求める勇気

助け合う男性2人

仕事が忙しくてつらくても助けを求めない人もいます。なぜなら、プライドが高く、根性がないとか思われたくないからです。

このような方は、責任感もつよく、真面目で周りからの信頼もあついことでしょう。しかし、その性格が原因で仕事を抱えてないでしょうか。

おそらく弱音をはかない人は仕事を任せられる量も多いことでしょう。ですが、無理をして仕事をしていれば、いずれ体の限界がきて鬱や病気になってしまうことも。

そうなる前に、仕事を断ったり、誰かに助けを求めたりする勇気も必要ですよ。

状況を変えるための行動力

今現在がブラック企業だと思うのであれば状況を変えるために行動してみる勇気をもってください。

行動しないと現状を変えることは難しいと思います。周りの人や会社なんて簡単に変わりませんからね。

もし転職した会社がブラックだったら、また転職すればいいんです。環境を変えることをおそれるのはやめましょう。

自分の人生をより良くするためはどうしたらいいのかを考えることが重要です。

まとめ

今回は施工管理のブラック企業について解説しました。

簡単にまとめると、施工管理がブラックと言われている理由には

  • 労働時間がながい
  • 休日が少ない
  • 労働環境がきつい
  • プレッシャーがかかる
  • 仕事内容に対して給料が低い
  • ストレスがたまりやすい
  • 屋外作業で体力をつかう

ことがあげられ、労働環境がきつい仕事だということ。

そしてブラックな施工管理会社の特徴に

  • 担当者任せ
  • 協力会社に管理能力がない
  • どんな仕事でも受注する

などが考えられるが、会社によってちがいはある。

今後すぐには、施工管理のブラックを改善することは難しい状況であるが、働き方改革について真剣に考えている会社もあるでしょう。

そして現在のブラック企業から脱出する手段として、まず会社と交渉。交渉しても変わる見込みがなければ、退職・転職する。

最後に、大事なのは自分の価値観を大切にし、助けを求める勇気と状況を変えるための行動力が必要です。

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